プロローグに「本を全然読まない」と書いたが、わたしは本当に本を読みません。
けれど、文章を書くことはわりと好きだったり。
ただ誤解を招きそうなのでひとこと付け加えるなら、本は“読まない”だけで“嫌い”ではないのですよ。
幼少期から本はわりと身近な存在だったのかもしれない。
アパートに住んでいた当時、家族川の字で寝ていた寝室には、大きな本棚があった。
その中に『死の棘』という小説があった。今でも鮮明に覚えている。
当時の保育園では漢字を習う授業があったのだが、『死』という漢字を覚えてきたのか、ある日を境に『死の棘』と背に書かれた本がとても怖くなり、親より先に寝室に入るわたしはいつもビビりながらお布団にもぐっていた。
『棘』は読めなかったが『死』が怖い。しかも書物が黒地に金色の箔押しで『死の棘』と書かれているため、青電球がついた寝室にまあまあ映える。
何日か我慢できたが、限界がきたのだろう。ギャン泣きしながら親のいる居間に行った。
「あのほん、こわい…」
「どれ?」
「これ…。」
「あ、死の棘?これが怖いの?」
「うん…。」
といって、親は笑いながらその本を抜き取って押入れにしまってくれた。ああ懐かしい…。
ちなみに今、仕様の確認でその小説を検索したら、存在した。字面が昔のままだ…。
ババアになった今でも怖いわ。トラウマとは。
なお、内容は知らない。結構有名みたいね。
あ。もうひとつ変なエピソードを思い出した。
小学1年生の頃、家庭の都合で学校が終わると学校の敷地内にある学童保育にお世話になっていた。
建物の中には体育館のような、室内で運動ができる部屋があって、そこには大きな本棚があった。
小学生の読み物なので絵本がほとんどだったが、その中でも『地獄』と書かれた絵本がまあまあな存在感を出していて、好奇心旺盛なわたしは怖いもの見たさで手にとった。
そして、予想通り怖い絵本だったので「じごくにいきたくないな…」と思いつつ、なんだかんだ何度も読み返していた。
夏休みのある日。学童でお泊まり保育があった。
学童のみんなと一緒に夕飯を食べて、銭湯に行って、たくさん遊んだ。
そして、寝る時間。
体育館のような場所でお布団を敷いてみんなで寝る。
わたしの寝る場所は、本棚の近くだった。
……はい。
予想がつきましたね。
他にも本棚があるのに、運がいいのか悪いのか、例の『地獄』の絵本がある本棚の近く。
もうね、『地獄』の背表紙がガッツリ見えるんですよ。これまた自宅にあった『死の棘』のように、窓から差す微かな光にまあまあ映える。
気になって気になって気になって気になって。
しかも何度も読み返しているから、絵がフラッシュバックするんですよ。
煮込まれてる絵とか、鬼に食べられてる絵とか、地獄から脱出するために石を積み上げてる子供たちの絵とか。
耐えられなくなって、ギャン泣きしながら学童の先生のところへ助けを求めに行きまして。
結局、自宅に帰りました。
先生や親は「ホームシックになったのね(フフッ)」と思っていたらしいが、わたしの頭の中は「じごくこわい、じごくこわい、…∞」であって、決してホームシックではない(たぶん)。
後日、学童の友達に聞いたら、次の日はみんなでバーベキューしたとのこと。いいなぁ。
…という感じで、本にはいろいろとお世話になっていたりするのです。
小さい頃は違ったかたちで接していたけど、少し大きくなってからはちゃんと文字を読んでいましたよ。それはまた別のところで。
余談ですが。あれだけ怖がりだったのに、小学4年生くらいから、ホラーマンガやオカルト系・スピリチュアル系の本をよく読んでいました。
タロットカードを暗記してたくらい。今はポーンと抜けてるけど。
また、ちょうどその頃、平日の夕方に「学園七不思議」というアニメが放送されていて、毎週わくわくしながら観ていましたね。
…今?
ホラー映画はもちろん、お化け屋敷すらダメですわ。